これまでの放送
読書の目的は情報を得ることだけではありません。
文学のように私たちの心を豊かにする本もあります。
“そういえば、本が人生を豊かにしてくれるって聞いたことあったな。”
東京大学大学院総合文化研究科 酒井邦嘉教授
「五感を駆使しながら我々読書するんで。」
読書が脳に与える影響を研究する、東京大学大学院の酒井邦嘉教授です。
東京大学大学院総合文化研究科 酒井邦嘉教授
「本を読むという行為は決して情報を得たいというためにやるわけではなくて、むしろ『自分の中からどの位引き出せるか』という営みなのです。」
読書をしているときの脳は、ほかの活動をしているときとは違う特徴があるといいます。
例えば、雪国の場面をテレビで見ているとき。
映像は視覚をつかさどるこの部分で。
ナレーションなどの音声は言葉をつかさどるこの部分で捉え、脳の前方にある部分に伝達。
場面の意味を理解します。
テレビは次々と場面が変わるため、脳は入ってくる情報の意味を理解することに追われます。
一方の読書。
「トンネルを抜けると雪国であった」という一節を読むとき、まずは言葉を視覚で捉え、次にその意味を理解しようとします。
このとき脳は、どんな景色なのか、主人公はどんな人なのか、イメージを補おうと視覚をつかさどる部分が動きだします。
すると、過去に見た風景などの記憶をもとに、想像を膨らませ場面のイメージが脳の中に出来上がります。
読書による、こうした一連のサイクルが、想像力を養うことにつながると考えられています。
東京大学大学院総合文化研究科 酒井邦嘉教授
「読書と言っても、そういう言葉だけでは実はなくて、視覚的に映像を頭の中に想起するとか、過去の自分の体験と照らし合わせて対比して考えるとか、自分で得られた情報から更に自分で自分の考えを構築するというプロセスがはいってくるので、人間の持っている創造的な能力がフルにいかされることになります。」
皆さん、こよい、本を手に取ってみてはいかがでしょうか。