生物の脳に学んだ情報処理技術をロボットの知能として実装する試みが長年にわたって行われています.しかし,現状では脳の機能のごく一部を,それも個別に実現できたにすぎず,生物の脳のように多様で高度な能力を持つ脳型情報処理システムの実現には大きな壁が立ちはだかっています.本セミナーでは,さまざまなアプローチでヒトの脳の機能を解析・モデル化する最先端の研究をされている先生方をお招きして,普段ロボット関係の学会では聞けない貴重なお話をしていただきます.
岡田真人先生,大津展之先生には,神経回路のダイナミクスやパターン認識を数理モデルとして表現し,実装するための基礎的な手法とその応用について解説していただきます.複雑な脳の機能をモデル化するには不可欠な数学のバックグラウンドについて,わかりやすくお話しいただけるものと期待しています.
また,深井朋樹先生,大須理英子先生,酒井邦嘉先生には,神経回路の構造,運動制御,言語情報処理について,生理実験を通して得られた最新の知見をご紹介いただきます.純粋に科学的な興味をかきたてられるのはもちろんですが,ロボットへの応用を考えても示唆に富んだお話になりそうです.
新年度にふさわしく「入門」と題してはいますが,これから脳型情報処理を研究に導入しようと考えている方,基礎を復習したい方だけでなく,すでに長年関連する研究をしている方にとっても,研究を進める上でのヒントになれば幸いです.
オーガナイザ:山根
克 (東京大学) |