氏 名 |
酒井 邦嘉(さかいくによし
) |
所 属 |
専 攻 |
: |
広域科学専攻、相関基礎科学系 |
学 科 |
: |
基礎科学科 |
部 会 |
: |
相関自然科学 | |
職名 |
助教授 |
発令年月日 |
2004年10月1日 | |
1.略歴 |
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| ■最終学歴
卒業/修了年月 |
大学学部学科/大学院研究科専攻 |
平成4年3月 |
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 | | ■学位
取得年月 |
大学学部/大学院研究科 |
学位 |
平成4年3月 |
東京大学大学院理学系研究科 |
理学博士 | | ■前任職
2.担当科目 |
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前期課程 |
物理学 |
後期課程 |
物性科学特論III、物性科学セミナーII、特別研究 |
大学院 |
相関基礎科学特殊研究、機能解析学大講座演習 | |
3.研究活動 |
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| ■研究分野
・ |
言語脳科学 |
・ |
認知神経科学 |
・ |
脳機能イメージング | ■研究業績 (主要研究論文、著書など10編以内)
・ |
Sakai, K. & Miyashita,
Y.: Neural organization for the long-term memory of
paired associates. Nature 354, 152-155 (1991).
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・ |
Sakai, K., Watanabe, E.,
Onodera, Y., Uchida, I., Kato, H., Yamamoto, E.,
Koizumi, H. & Miyashita, Y.: Functional mapping of
the human colour centre with echo-planar magnetic
resonance imaging. Proc. R. Soc. Lond. B 261, 89-98
(1995).
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・ |
Sakai, K., Bilek, A. M.,
Oteiza, E., Walsworth, R. L., Balamore, D., Jolesz, F.
A. & Albert, M. S.: Temporal dynamics of
hyperpolarized 129Xe resonances in living rats. J. Magn.
Reson. Ser. B. 111, 300-304 (1996).
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・ |
Embick, D., Marantz, A.,
Miyashita, Y., O'Neil, W. & Sakai, K. L.: A
syntactic specialization for Broca's area. Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 97, 6150-6154 (2000).
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・ |
Hashimoto, R. & Sakai,
K. L.: Specialization in the left prefrontal cortex for
sentence comprehension. Neuron 35, 589-597 (2002).
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・ |
Sakai, K. L., Noguchi, Y.,
Takeuchi, T. & Watanabe, E.: Selective priming of
syntactic processing by event-related transcranial
magnetic stimulation of Broca's area. Neuron 35,
1177-1182 (2002).
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・ |
Hashimoto, R. & Sakai,
K. L.: Learning letters in adulthood: Direct
visualization of cortical plasticity for forming a new
link between orthography and phonology. Neuron 42,
311-322 (2004). |
・ |
Sakai, K. L., Miura, K.,
Narafu, N. & Muraishi, Y.: Correlated functional
changes of the prefrontal cortex in twins induced by
classroom education of second language. Cereb. Cortex
14, 1233-1239 (2004). |
・ |
酒井邦嘉:
『心にいどむ認知脳科学−記憶と意識の統一論』. 岩波書店, 東京 (1997).
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・ |
酒井邦嘉:
『言語の脳科学−脳はどのようにことばを生みだすか』. 中公新書, 東京 (2002).
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■その他
(作品、特許などの創造的活動)
・ |
『サイエンスアイ』にっぽん名物研究室「脳の言語処理の仕組みを探る」.NHK
教育(2000年10月7日,2001年1月20日,27日,3月3日(再放送). |
4.社会的活動 |
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| ■学内での活動
(役職、学部/全学委員会委員など5件以内)
年度 |
役職 /
委員 |
平成9〜16 |
広報委員 |
平成9〜16 |
財務委員 |
平成12〜16 |
教務委員 |
平成16 |
学生委員 | |
■学外での活動 (学会役員,国際会議組織委員,審議会委員など5件以内)
年度 |
役職 /
委員 |
平成9〜15 |
Cognition誌編集委員 |
平成9〜14 |
科学技術振興事業団
CREST『脳を創る』研究代表者 |
平成13〜16 |
ヒューマンフロンティア・サイエンスプログラム研究代表者 |
平成14〜15 |
科学技術振興事業団 SORST
研究代表者 |
平成15〜 |
科学技術振興機構
CREST『脳の機能発達』研究代表者 | |
■その他 (受賞などの特記事項)
年度 |
受賞などの特記事項 |
平成13 |
第1回日本神経科学学会奨励賞 |
平成14 |
第56回毎日出版文化賞 | |
5.採用理由 (1000文字前後) |
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| この人事選考は、次のような趣旨のもとで公募によっておこなった。「専門分野・仕事の内容:先端的計測技術を用いて、学習・認知など生体の高次機能について開拓的研究を推進する方。大学院(相関基礎科学系)・後期課程(基礎科学科の3、4年生)・前期課程(教養学部1、2年生の物理または化学)の教育を担当」。選考においては、通常の応募者11名のほか委員推薦に応じた5名の候補者も含め、総数30名の候補者について検討した。人事委員会の面接を含む慎重審議の結果、部局内の総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系の酒井邦嘉助教授を最適任者と決定した。
酒井氏は東京大学理学部物理学科を卒業後、大学院では同大学院で生物物理学の研究を行った。博士課程では医学系研究科の教官の指導も受け、研究成果は博士論文とNature誌の論文に結実した。
研究における酒井氏の領域開拓的姿勢の表れは、博士課程終了後にハーバード大学およびMITにおいてまだ揺籃期にあった「実験言語学」の開拓に挑戦したことである。fMRIの手法によって、文法を使って言語を理解するときに働く脳の部分を明らかにした。その後、この研究にパルス磁場によるTMS(経頭蓋的磁気刺激法)の実験をも導入することにより、文法を使う言語理解に対する特異的な活動が、左脳の前頭前野の一部に局在することを突き止めるとともに、TMSが文法判断を特異的に促進するという興味深い結果を得られた。
このような成果は多数の論文となって公表されており、それらの論文が頻繁に引用されていることは、この研究のインパクトを端的に表していると言える。実験言語学を標榜する研究者は多いが、酒井氏は実質的な学問的成果に結実させることができる力量を持った数少ない人材の一人であると言えよう。酒井氏が、自然科学を基礎としつつ、従来の見方では縁遠いと見られる分野の研究を開拓しておられることは、相関基礎科学系の精神をさらに発展させる上で有効であると考えられる。
教育面においては、酒井氏は物理学を基礎として教えることが広範な分野で活躍する基礎として重要であることを強く認識するとともに、大学院教育・研究の場においては、それぞれの学生のバックグラウンドを生かす指導をすることを目指しておられる。このような指導方針は、総合文化研究科、なかんずく相関基礎科学系の方向性にマッチするものといえよう。
以上の総合的に判断に基づき、酒井邦嘉氏を総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系助教授としてお迎えするにふさわしい方と判断した。
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